学会奨励賞発表
JSTSS24 優秀演題賞
第24回日本トラウマティックストレス学会学術総会では、口演9演題、ポスター29演題、合計38演題の一般演題が発表されました。口演は本学会理事4名、ポスターは理事5名によって厳正な審査が行われました。各審査員による10段階評価の合計点をもとに、審査員および大会長による協議を経て、口演から優秀賞3演題、ポスターから最優秀賞1演題を選出いたしました。
惜しくも選外となった演題の中にも優れた研究が多く、本学会における研究活動の活発さを示すものでした。充実した成果をご発表いただいたすべての皆さまに、この場をお借りして改めて御礼申し上げます。
優秀演題賞(口演)O-2
土肥早稀(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)
助産師を対象としたトラウマインフォームドケア動画研修の効果:無作為化比較試験
< 講評 >
本研究は、助産師を対象に開発されたトラウマインフォームドケア(TIC)の動画研修プログラムの効果を、無作為化比較試験というエビデンスレベルの高い方法で検討したものです。研究の結果、TICに対する態度の改善、職場での心理的安全性の向上、バーンアウトの抑制といった効果が示唆されました。本研究はTICの実践を周産期において体系的に普及させるためのエビデンスを提供しており、今後の周産期医療における教育と実践に大きく寄与することが期待されます。
優秀演題賞(口演)O-6
日比麻記子(東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース)
小児期逆境体験および保護的・代償的体験が成人期のセルフ・コンパッションに与える長期的影響の検討
< 講評 >
本研究は、1,556名というサンプルサイズで、小児期逆境体験(ACEs)と保護的・代償的体験(PACEs)が成人期のセルフ・コンパッションに及ぼす影響を検討したものです。研究の結果、PACEsによってセルフ・コンパッションを高める効果が示され、かつACEsによる負の影響を上回る可能性が示されました。本研究は予防的介入やレジリエンス強化の観点から大きな示唆を与えるものであり、今後の研究の展開と実践への応用が期待されます。
優秀演題賞(口演)O-9
千葉俊周(国際電気通信基礎技術研究所脳情報研究所行動変容室)
自殺リスクにおける感情制御の二面性:大規模データ解析による検討
< 講評 >
本研究は、10万人規模を超える大規模データを用いて、自殺リスクにおける感情制御の二面性を検討し、自傷行為と自殺の関係をめぐるパラドックスを実証的に検討したものです。感情過剰制御型と感情過小制御型という二つのパターンを明確にした点は、自殺リスクの多様性を理解する上で重要な知見といえます。若年層・女性と高齢者・男性で異なる心理メカニズムが作用していることを示した成果は、今後の自殺予防策を対象ごとにより精緻に設計する上で有用な示唆を与えるもので、今後の発展が期待されます。
最優秀演題賞(ポスター)P-6
小西優歌(東京大学大学院医学系研究科精神看護学分野)
トラウマインフォームドケアに対する態度と主体価値との関連についての検討
< 講評 >
本研究は、災害医療に従事する医療従事者を対象として、主体価値とトラウマインフォームドケア(TIC)に対する態度との関連を縦断的に検討したものです。「社会をよくすること」や「積極的に挑戦すること」といった価値観がTICに対する肯定的な態度と有意に関連することを明らかにした点は、TICの普及・実践において個々の価値観を踏まえる重要性を示す知見といえます。本研究は、教育やトレーニングのあり方に実践的な示唆を与えるとともに、TICの組織的な定着を考える上でも有用であり、今後の展開が期待されます。